生チョコタルトとミートグラタン

ジップロックに入れたマリーをめんぼうで叩き潰しながら、誰の顔を思い浮かべたら上手く潰せるかなって考えてた。殴りたいほど憎い相手ってみんなひとりはいるのかな。デスノート拾ったら一番最初に誰の名前書く?って質問、私は絶対父親って言うだろうな。板チョコを湯煎したいのにボウルと鍋の大きさが噛み合わなくてイライラする。好きの反対は無関心って腐るほど聞いたけど、パパは私に対して無関心だった。離婚してから会わせてほしいなんて言われたこと一度もないし、誕生日にLINEスタンプひとつ寄こして1万円振り込めばそれでいいと思ってる。生クリームとチョコが上手く混ざらなくてダマになる。愛情と憎しみは近くて遠い。私はパパに対して無関心になんてなれやしないけどこの憎さが愛なんてことあるわけがない。こんな気持ちもずっと、ダマみたいに消えてくれない。泣きながら養育費払ってくださいって電話した日に込み上げてきた殺意はきっと、パパが唯一私に教えてくれたことだね。ありがとう、おかげで誰のことも愛せないよ。オーブンにかけたグラタンのチーズが溶けてきた。丁寧にご飯を作って食べるようなあったかくて幸せな日には、早くパパが死なないかなあって心の底から思うんだ。できるだけ、痛くて辛い死に様でありますように。ナスがたっぷり入ったミートグラタンは、なんでかすごく美味しかった。